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玖;愛だと思ってた

私に触れる優しい指先も私を包み込む頼りがいのある腕も私だけに紡ぐ静かに溢れる情熱も全てが愛だと思ってた 初めての恋だったそこには誠実しか存在しない純粋で混じり気などなく美しいとさえ感じていた 残念なのは私は誰の目にも若者で彼は誰に目にも大人で他者の理解は得られない事だった 出会いはよくある話生徒と先 […]

捌;神様、どうかお導きを。

神様、この世はどうして辛いこと哀しいことがあるのでしょうか?寂しさも心の痛みも、一人乗り越えようやく辿り着いた安住の地ですらどうして幸せなままではいられないのですか?神様は試練と呼ばれるのですか?もしそうだと仰るのならこの世は試練の連続なのですね。 心が痛みを訴えています。悲しいよ、辛いよ、痛いよ、 […]

漆;手塩にかけて、頑張れ私

手塩にかけて願いを込めて明るい未来を信じて生きろ 頑張れ私頑張れ私 あぁ、すまないね、適当に座って。ん?わかった、お茶くらい出そうと思ったけど余計か。あたしの朝?遅いんだか早いんだかよくわからないけど、旦那の出勤日によるよ。三時か四時半に起きてあそこの狭い台所で旦那のおにぎり握るの、毎朝。塩を混ぜる […]

陸;これは脂肪?それとも希望?③完結

深海で永遠に人の目に触れず息をしていたい。そんな搾かす程度の希望ですら叶わなくなった私の人生。 荒んで淀みきった家の中でどんなに努力をした所で変わらない。勝手に産んでおきながら感謝を強要する父の恩着せがましい台詞を聞くのはもううんざりだった。だから大学に進学する気などさらさらなく、早く社会に出て働き […]

陸;これは脂肪?それとも希望?②

運ばれた病院には精神科があり、その日のうちに強制入院を言い渡された。食事も管理され、薬も開けた口に乗せられ飲んだことを確認され、情報というものは一切禁止、当然スマホも。そして面会は希望者1名のみ、ならば私は武史がいい。その選択に間違いはなかった。彼は仕事終わりに「いつもと同じ」武史で私に会いにきてく […]

陸;これは脂肪?それとも希望?①

太陽を遮るカーテンが優秀すぎ昼夜がわからない部屋の中、僅かな明かりが点滅をする。はぁ、朝か。憂鬱な気持ちでスマホを取る。 「今日は何キロ?」 のろのろとベッドから抜け出して、乾いた喉もそのままにトイレへ向かう。なるべく軽くなっていなければ、ざらつく気持ちで下着姿になり体重計に乗る。今日の体重をスマホ […]

伍;真実の仔

あぁ、峠を越した。 安堵し強く握りしめていた手を開く。掴みかかり揺さぶった時に抜けたであろう、我が子の髪の毛。昔はやられっぱなしだったのに、中学に入ってから抵抗するようになった。子供と言っても男性だ、振り払う腕の力に怯みそうになる。 だが、その抵抗がまたしても腹が立ち、ますます感情が昂ぶってしまう。 […]

肆;やっぱり私が大好き愛してる 後編

私はそもそも結婚式に興味がなかった。だから、進行表も席次表もさらっと目を通しただけ。マタニティハイなのか、私の興味はお腹の子だけだったから。 祝福の行進曲が高らかに鳴り響き、会場への扉が開いた。たくさんのフラッシュにスポットライト。光が強くて来賓の顔がよく見えない。 エスコートされ、あふれんばかりの […]

肆;やっぱり私が大好き愛してる 前編

今日の主役は間違いなく私。私をドレスを「綺麗、すごく似合ってる」そう口々に褒めてくれる。お腹の子供も喜んでくれているかな?そう、授かり婚というやつ。 36歳、得に結婚願望はなかったが、産むことも籍を入れるのも、まぁ成り行きってやつだけどすんなりと決まった。主人となった相手は元彼。仕事が最優先の400 […]

参;餌付け。後編

にわかに信じがたいだろうが、新人さんと私の間に体の関係は全くなかった。自分の肉体を晒す自信がないのはもちろんだが、それ以前に新人さんにそんな事を望んでなどいなかった。 なぜ? そうだ、なぜだ?散々餌付けをしても距離が変わらない。割りに合わない、そう思うのが普通だろう。自分でも不思議だったがある時気が […]