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参;餌付け。前編

そんなつもりは毛頭なかった。浮気する人間は大抵そう言うが、私も例外ではなかったな。 初めは自分に関心を持って話を聞いてくれるのが単純に嬉しかった。 このまま小さいながらも自分が経営する仕事場と連絡事項しか話さなくなった見慣れた家人のいる家との往復で終わるんだろう。まあ、他所もこんなもんだ、安定した人 […]

弐;睡蓮の花言葉「純粋な心」

凛、あなたの髪はまるであなたそのもの様に真っ直ぐで美しい。そう、母が私をとろけさせる甘い言葉をささやく。 「可愛い可愛い私の凛、あなたは夏に生まれたの。真夏の池に咲く睡蓮の花のような気高く美しい姿でね。だからあなたに凛(りん)と名付けたの。太陽のように明るく愛され、きっと将来美人になるわ。とても楽し […]

壱;最高の目標をお前にくれてやる

ある日、とうとう恐れていた一線を超えてしまった。我に帰った時にはもう全てが後の祭りだった。とんでもない事を、私はやらかした。 息子の頭部に、息子が授業で作った陶器を、重量のある、彼自身が作った作品を、怒りの衝動を押さえ切れず感情の波に抗おうともせず、躊躇なく思い切り振り下ろしたのだ。額を、私自信が青 […]