【幸】参:恥を知れ

恥を知れ
人の真似ごとでよく笑ってられるよな

鏡をみてみろ
卑しく汚れたその面を

俺が捻り出したアイディアをいとも簡単に利用しやがったお前のことだよ、
自覚あんだろ?
だからお前の面は汚ねえんだ、隠しきれねぇ卑しさが漂ってるもんなぁ。
胡散臭くてしょうがねぇ。
さぞかし気分いいだろうよ、おっさん。パクったなんてバレてないもんな。

所詮アイディアだデザインだなんて売れたもん勝ちだ、そんなのわかってる。でもよ、ヒント程度のパクリなら可愛げがあるがお前がやってんの丸パクリって言うんだぜ?
しれっと「私が考えたアイディアです」って顔しやがってあぁマジうぜぇ。

ただよ、俺の頭ん中までパクれねぇからな。
形になったところでどうだ?仕上がった線は。
他人は知らねぇけど少なくとも俺の魂には何も響かねぇ。
だってお前が生み出したもんじゃねぇからよ。ペラッペラで当たり前だよな。

見てろよ。
俺はお前にアイディアをくれてやるだけじゃ終わらねぇ。
楽しみに首洗って待っとけよ。
てめえの頭ん中なんて軽々超えてやる。
パクったお前が恥かくようなものをな。

徹底的に俺の中の譲れない軸を磨き切る。
誰が見ても「俺」だとわかる線をこの手でこの脳で捻り出してみせる。

はっ、なに熱くなってんだ俺。
だいたいこの世界で生きるってのは、この繰り返しと腹括って飛び込んだんだろ?
だせぇな、俺。

本物を作り出す、そう決めたんだろ?
だったら周りを気にすんな。
俺は俺を貫く以外、この世界で胸張って勝負できねぇってわかってんだろ?
だよな?だったら死ぬ気で歯ぁ食いしばって言い訳しねぇで超えてみろ。

あの卑しくて汚ねぇあいつをよ。

焦るなよ俺。いいか?積み重ねていくんだ。
自分らしさをとことん追求しろよ?
磨いて磨いてとことん削ぎ落とせ、自分を表現するのはそれからだ。
苛立ちも悔しさも惨めさも今は堪えろ、取り込んで利用していつか昇華してやろうぜ。

自分の手と足でどこまで行けるか、やってみようぜ。
その先にあるのが、敗北か、見たことのない絶景か。

それは俺自身が掴むもんだろ?
さぁ、行こうぜ、雑音の聞こえない場所までさ。

死に様は生き様らしい、
どうせ人間いつかは死ぬんだ。
だったら俺は卑しく生きるのはごめんだ。
魂を汚すような生き方をして一体何が得られるんだ?そうだろ?

俺の魂が熱くなる様な生き方をしたいんだろ?
だよな、だったらぶちあげようぜ。
人の評価なんて俺の人生に何になる、
響く奴に届けばそれでいいだろ?

俺は昔からうまく言葉で気持ちを表現できない。
母は俺が紡ぐ線から感情を読み取ってくれた。
単純に母が喜んでくれるから、嬉しい。
いつの間にか俺の気持ちを作品に落とし込む事が俺の表現方法になった。

だから俺は線でしか俺の気持ちをうまく伝えられない。
この世の汚さも、その汚さに隠れた真実の美しさも。
残酷さも温かさも、本音と建前も、悔しやも優しやも。
この世に生まれた俺を包んでくれた柔らかな光たちを、自分の手で表現したい。

幸せな誰かが、ふと微笑むような
傷ついた誰かが、救われるような

魂に届く、世の中では希望と呼ばれる「何か」をさ。
俺の作品で、温もりや幸せってやつを感じてくれる心に響くものを作りたいんだ。

口下手な俺に、母は言葉以外でも生きられることを教えてくれた。
世界はあなたが思っているより温かくて優しいのよって。
上手くいかない時ほど空を見て。世界はあなたが思っているよりも遥かに遥かに自由で広いのよ。
でもね自由の中に一つルールがあるの、大切な人にちゃんと誠実なあなたでいること。
一番大切なのはあなた自身、だから自分に一番誠実に生きてねってさ。

本当だな、いつの間にか仲間って呼べる奴ができた。
あいつらも頑張ってる、白鳥みたいに余裕に見えて足掻いてる。
俺も負けられない。胸張って「俺」だって言える線をいつか掴みたい。

口下手な俺のありがとう、だ。

さぁ、まずは自分と向き合え。
世界は広いぞ、こんなところで躓いてちゃまだ早い。

あいつらといつか雑音のない世界で笑い合いたいよな。
だったら歩け、向き合え、真摯に生きろ。

卑しい生き様なんてしたくないだろ?
さぁ行こうぜ、ぶちあげようぜ。

一百野 木香